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墓場のゆりかご

生まれていったり死んでいったり

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天法の護人 序

とりあえず投下
それは。
素晴らしい光景のはずだった。雲ひとつない晴れた空、どこからともなく小鳥が囀り、太陽の暖かさが草木に生命を与えている。草木に寝転び、青い空を眺めることも可能だっただろう。しかしそれはフェイク。スクリーンに選び出された偽物に過ぎない。それが日常。少年少女たちに与えられる最高級の安らぎであり、しかし子供たちにはなんの意味もなさない景色。いつ吐き出してしまうかもしれぬパンを胃の中にぐっと押し込め、無言で食事をする。それがどれだけ地獄であるかを、無事大人になったモノは知らないのだろうか。
「ね、聞いた?今日、講義の時間に来るんだって」
人口が主流となった昨今の食事。グリンピースにしろ、見た目や味はそのものだが、実は栄養補助食品のサプリメントらしい。そう考えて食べると本当に不味いものだ。法杖つきながら食べていると、見知らぬ少女に声をかけられる。
「聞いた聞いた。来るんだってね、いよいよ」また見知らぬ少女がその問いかけに答える。
「やっと盾が出来るよ。これで死ぬのも免れるかな」
「強いとは限らないでしょ。とはいえ、今回のは傑作らしいよ」
「誰に聞いたの」
「サワモト中尉」
「あーあの人声でかいもんね」
自分が喋らなくとも、誰かが自動的に話してくれる。バカみたいな会話だ。盾が出来たところで、お前は死ぬだろう。そこいる少女たちはそういう存在に過ぎない。自分はそうにはなりたくないから、こういう会話にはずっと口を閉ざしている。
盾ができるという。
ふうん、じゃあ本当に死ぬのを免れるのかな。
いいや、死ぬのは決まっていて、その盾がいることで長引いているだけだ。そう思った。大人に満たず死ぬ者等五万といる。格段おかしい事ではない。だってこういう世界なのだから。

もう随分と前―私が生まれるずっと前―地球は美しい星であったと聞いた。世界は192カ国あり、言語は1億を超え、その国の言葉で喋れることを至極当然のように許されていた。食べるものも見るものにも溢れ、それが普通だったんだって聞いた。

西暦2065年のことだった。突然世界で大災害が起き、地震が起き家屋が潰れ、大量の水で土地は流され、消しきれないほどの大火災で物は焼かれ、数え切れないほどの死者と国を失った。
―神の涙。
神様の涙が大きすぎて、地に落ちた反動でこんな大災害が起こったんだと。
神様が泣いたのは人間が好き放題しすぎたからだったんだと。
人間が全て悪かったんだと。

―私たちは生きている。生かされている。

最悪な世界は、神様が残した試練なのかな。今度こそみんなで大切な地球を守り抜こと決断し団結し力を合わせてよりよい環境を築いていくのではないかと神様が信じてこの世界を殺さないのかな。
ならこんなクソみたいな世界、早く殺しちまえ。

お前の思う通りになんかならないからさ。
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